4月27日滋賀～大阪

今日も世界を始めれる朝。

目が覚める事がこんなにも奇跡だと気づけた朝。今日も世界を始めれる朝。
まだなぜ滋賀にいて、こんなにも時間が経過しているのか理解できない上に頭の痛みが僕を襲う。なぜだろう？

※この事が引き金でこれから起こる最大の悲劇をこの時の僕はまだ知らずにいた。

うまく力を振る事も出来ないが、昨日の目的地「京都」に向かわなければ。
慌てて夜明けを前に走り出す。登りで力が入らずでよろけてフェンスに身体をぶつけた。
痛みもわからないまましばらく立ち尽くしてた。身体が言うことをきかなくなった。水を飲もうとするがペットボトルももう持ち上がらない。

やっぱり諦めた少し後には頂上でだった。そこから坂を下り京都にへ。喜ぶ力もなく淡々と坂を下って行くその時。

ここに来てのパンク。また立ち止まり動けなくなる。自転車屋はシャッターが閉まっている時間。
近くの民家に飛び込みバケツを借りパンク箇所を確認。
手持ちの修理キットで破損個所を修復。備えがあれば助かる。
震災の時もきっとそうだ。しかも飛び込んだ民家でお茶と草餅を出してもらった。トラブルの時は人が助けてくれる。震災の時もそうだった。

仲のいい素晴らしいご夫婦。「またいつでも遊びにおいで」と言ってくれた。ピンチの底で偶然から始まる人との出会い。辛い時に優しくされる事で希望が生まれる。これだって震災の時と同じだよね？

ひたすらひたすら走り、昨日の目的地「京都」をようやく追い越す。そこからも淡々と車輪の回転を見て走っていたのでいつ大阪に入ったのかすらわからず走ってた。
走ってると都会の小学生に「変な奴おるで～」と笑われる。そらそうだな。

頭が痛い。
頭が上がらない。必死の状態で車輪の回転速度を見つめ、流れる道路を見つめながらただひたすらに神戸をめがけて漕ぎ続けてた。
その時だった。

何かに衝突した。

大きな破裂音と強い衝撃から乗っていた自転車を投げ飛ばされ地面に叩きつけられてしまった。
そのまま何が起こったのかわからず倒れ込み動けない。

周りの人たちが慌てて何かを叫んでいるがよく聞き取れないし言葉も出ない。
朝からの止まない頭痛だけじゃない。鎖骨に異常な激痛が走る。左手からは血が流れ出てる。
破損した車の部品が散乱する。大きく歪んだ自転車が見える。
救急車のサイレンが遠くの方から聞こえた時、このチャレンジが失敗した事を感じて涙が止まらなかった。

救急車が僕のすぐ横に停まり、勢いよく担架が運び込まれてくる。
僕は最後の力を振り絞り救急車に乗る事を拒否するぐらいの元気を見せようと立ち上がろうとするが立ち上がれず、悔しくて情けなくて目に映った空が憎かった。

僕は何も出来ず乗ってた自転車も起こせないまま、そのまま救急病院に搬送されて行った。